今いる世界は。見えているものは。触れているものは。そして自分自身は。
本当に「本物」か?
京都を舞台にしたストーリー。
疾走感あふれる場面展開の中に溢れる、色彩鮮やかな舞台。
文庫本のページをめくる度に、
いろんな色が頭の中に浮かんでくる。
「下校する頃には、堀川通が橙色に染まっていた。(121ページ)」
頭の中に情景がありありと浮かんでくる。
本が好きな男子高校生 堅書直実(かたがきなおみ) は、
内気な性格で、自分から積極的に人と関わるタイプではない。
本が一番の友だちである。
本好きな私としては、共感せざるを得ない。
ヒロインの 一行瑠璃(いちぎょうるり) は、
どこか古風な、どこか不思議な直実のクラスメイト。
一行瑠璃みたいな人とおしゃれなカフェで読書会を開く。
とてもすてきな時間が流れるだろうな。
直実が「10年後の直実」と出会い、瑠璃に惹かれていく。これはよくあるような展開である。
本のあらすじを紹介するよりも、一番心に残った文を紹介したい。
329ページ。後ろから4行目。
真っ白い世界に、最初の一行目を書き込む。
何を書いてもいい世界で、僕は。
何を書くかを、自分で決めた。
「まだ何も知らない、新しい世界なんです。」
自分の世界には今、何が書き込まれているのだろうか。
そして、どれほどの空白があり、何色のペンで書きこまれたのであろうか。
いつまでも真っ白なキャンバスを自分の心に用意しておきたい。
「いまからどんなことにでもチャレンジできる!」
「自分の進む道は自分で決めていく!」
こんな気持ちをずっと持ちたい。
そうすれば、自分に見えない景色がこれからもどんどん見えてくるだろう。